調子の悪い方のお話を伺い、様子をみて、苦痛を軽減するように近くで寄り添う。さりげなく声をかけ、不安や怖さといった心の声に耳を傾け、目の前の現実にとまどう方の支えとなることがナースの仕事の一つでした。病気のときはどうしても体調の悪さ、自覚している症状や苦しさ辛さにご本人の目が向けられます。

一方で看護している私の目には別のものを映しだしていたのでした。それは、今までその方がどのような生き方をしてこられたのか、どのような想いで人生を歩んでこられたのかということでした。ご自分の人生に対する受け止め方、自分自身への責任といったお人柄や、社会的立場も含めて全人的に捉えるようにしていたのでした。

同じ病名の疾患を患われたとしても、全く同じ病状をたどる方はおられません。それぞれ出てくる症状も訴え方も違ってきます。この違いは何だろう？確かにもともとの身体が違うので、個体差はあります。

病気に対する捉え方、病気になった自分の身体に対する思い、目の前に現れた現実の受け止め方には本当に様々なものがありました。

どれもその方の人となりが現れ、その方の人生が垣間見えました。その中で私がナースとしてお伝えしたかったことはその方の今から向かう人生への祈りでした。

こんな気持ちでナースをしてきたように思います。

ナースは患者さんの苦痛を取り除いたり、日常生活の援助を行いますが、これは目の前の状態を整えるということになります。

しかし本当にケアしておくのが必要なのは、病気になる前の、まだまだお元気な方、
‘生きずらさ‘や‘こんなはずじゃなかった‘、‘もうこのままでいい‘、‘自分さえ我慢していればいいかな‘
といった自分に対しての喜びや愉しさを手にしない考え方をされている方々でした。

病気になってから、ナースとして祈るのではなく
どれだけ人生を愉しんでおくことが大切なのかが見えてきたのでした。

これなくしては本物の看護にならない。
看護の本質は個人や家族、社会が出来る限りの健康を取り戻し、質の高い生活が出来るようにすることです。医療としての側面だけでなく人生という道のりを全人的な視野をもって寄り添う
『どんな考え方をして何を選んでどう生きてきたのか』

私が医療現場のナースとしての仕事を離れたのはこの想いからでした。

振り返ると、その方が全部を語らなかったとしても感じることが多くありました。
そういう意味ではサイキックな部分を使っていたんだと思います。
そしてその方に寄り添って想いを馳せた分だけ、伝わってくるところがありました。

「今までの辛さや苦しみを和らげたい」

これは病気になってからしなくてもいいんです。
しんどさや辛さを感じた時に手放していきましょう。

目の前の現実は今まであなたが選んできたものです。
今がどれほど辛くてもこれからの現実は今からあなたが選んでいけるのです。

遅すぎることはありません。気づいた時から始めれば大丈夫。
どうしたいのか、どうなりたいのか
いつからでも選び直すことができます。

未来はあなたのものです。
自分を大切にした未来を選んでほしい。

そしていつの日にか人生の幕が閉じるときに
「あぁ～～～いい人生だったな。ありがとう！」
で終われたらいいとおもいませんか？

そのために本当の『じぶん』の声を聞き一歩ずつ大切に
人生という道のりを歩んでいきませんか。